大昔に母の口から出た「何事も1級というのは大したものなのよ」という何気ないひと言がずっと心に引っ掛かり、40代後半にしてようやく1級に合格しました。以下は私の受験雑感です。
1級受験を予定されている方、受けてみようかなと検討中の方々のお役にたてば幸いです。
1.受験暦
- 大学4年時(たぶん)不合格判定BかC(覚えていないくらい昔)
- 1995年6月 米国大学院留学から帰国直後 不合格 判定A
- 2007年6月 不合格 判定A(読解問題は1問ミス、語彙問題は半分程度の出来。)
- 2008年6月 1次試験 合格(読解問題は満点、語彙問題は4問ミスの出来。)
- 2次試験 合格
1~ 3はもちろん1次試験ですべて不合格でした。
2の時点では、米国の大学院で修士号を取得した直後だっただけに、ものすごくショックを受け、二度と受けるもんか!と参考書も全部捨てた記憶があります。
大学院の留学生用のアカデミック・ライティングの授業では最終的にAプラスを貰いながら、どうして英検1級の1次が突破できないの?と困惑しましたが、今思うと、英検受験用の対策を全然ちゃんとしていなかったからなのです。
留学生用の授業で少々作文の出来がよかったからと言って、国際的な学会や発表の場では、ようやくスタートラインに立てた程度のことだったのですが、その時はそんなことさえ思い至りませんでした。お恥ずかしい。
その後、このまま歳を取って「昔は英語ができたのよー」なんて老人ホームで自慢する御婆ちゃんにはなりたくないなあ、と思い、一年発起して2006年から再度受験することにしました。
そこで、受験者の間で評判の方々のHPを見つけて読みふけったところ、目から鱗とはまさにこのことでした。いままでのは、まるで「対策」なんてものではなかった。無策に等しかったことに気付いたのです。そして受験対策の必要性に目覚めた私は、地元で唯一の1級レベルの英語勉強会、わずか数名でやっていた茅ヶ崎式英語会に通い始めました。
2.1次試験対策
米国の大学院に3年在籍しましたので、読解はさんざん鍛えられていました。
なんたって、毎日毎日山のような本を課題に出され、朝4時まで読んでも間に合わない日々の連続でした。
ですから、弱点はなんといってもセクション1の語彙であることは明白でした。もともと英語の単語の暗記は大嫌いで、それが英語嫌いの原因の一つでもありました。
しかも、1級の語彙は社会科学系の大学院でさえ見たことも無いような単語が一杯です。
これはやはり対策を考えて、覚悟を決めて、毎日覚えるしかありません。
幸いにも、すでに1級取得の友人から、覚えるための良い参考書や方法などのアドバイスを貰うことができました。
「とにかく単語はその日覚えた半分は翌日には忘れると覚悟して、日々遣り続けるのみ」は本当です。
忘れたことにショックを受ける暇があれば、覚え続けるしかないのです。
私の場合、語彙対策に一番のお薦めは、『英検1級 語彙・イディオム 問題500』旺文社刊、です。
問題を解いてから、単語と訳を小さいメモ帳に書き写し、エプロンのポケットや仕事カバンの隅にいれて、いつも見直しをして、完璧な暗記を目指しました。
その本の解説でも触れているように、「落ちる人は、何千語も暗記しなければと焦って結局覚えきれない人。受かるひとは、本書の500語だけを完璧に暗記する」を実感しました。
「その日の分(100語)を完璧に覚えるまで寝ない」の単語チェックには、当時受験生の長女に付き合ってもらいましたが、あまりの必死な形相に、娘たち(次女は小学生)からは、「そんなにやらないと英検て受からないの?」と呆れられるくらいでした。
本番では、見たことのない単語は2問だけでした。これで初めて1次試験は突破できるかも、と解きながら実感していました。
もう一つの弱点は作文でしたが、これは私の場合は200ワードに収めることが問題でした。仕事柄一時間でも2時間でも講演はできますが、200ワードで書けといわれると、削るのが至難の業でした。
前年の受験では、語彙対策にばかり頭が行ってしまい、作文を全く練習していかなかったのも敗因の一つでした。
そこで、本番の1週間前に、取りあえず200ワード以内で書く練習を一日30分くらいやりました。とにかく「余計なことを書かない」「言いたいことを先に書いてあとは補足だけ」を守りました。
結果は6割くらい取れました。
嘗てのアカデミック・ライティングの先生には見せられない出来ですが、いいんです、何点だろうと、英検は受かればいいんです~(*^_^*)。
リスニングは、茅ヶ崎式英語会で週に1度、NHK英語ニュースのディクテーションをしていましたし、もともと得意だったので何もしなかったことが災いし、惨敗でした。過去最悪で、7割しか取れませんでした。こう書くと嫌味に聞こえるかもしれませんが、幼少期から音楽をやっていた私には唯一の得意分野なんです。英語の音は音楽と同じだから。
この回の試験では、かなり聞き取り難い口語が多く、ミクシーなどでも帰国子女の方々が惨敗した様子などを拝見し、私だけじゃなかったと胸を撫で下ろす始末です。
要は、慢心して準備を怠ってはいけない、ということですね。
結果は、なんとか合格でした。
語彙21/25、読解26/26、リスニング24/34、作文16/28
合格 87/113 (合格点 79点以上)
3.2次試験対策
1次試験の結果発表から2週間も無いのですが、もしかすると今回は受かるかもしれないという期待もあり、取りあえず1次試験終了後からいろいろとHPで検索して対策を考えました。
田舎では2次対策講座など、どこにもありませんし、通信添削もいまさら間に合いません。
それに個人的には、面接の練習に通信添削を生かす自信もありませんでした。
私自身、仕事で講演活動をしていますが、どんなに時間を掛けて準備しても、いつも気が付くと原稿をすっ飛ばして勝手なことを口が言い始めてしまうからです。これは個人的な習性もあると思います。なので、私の場合は皆さんにはあまり参考にならないかもしれませんが、とにかく、2分以内でスピーチすることだけ練習しました。
そうはいっても、仕事や家事の合間のことですから、結局ちゃんと練習できたのは直前3日間だけです。
ストップウオッチ片手に、過去問一つ一つに対し、目をつぶって2分以内でスピーチを完結できるかどうか、をチェックしました。
2次対策の様々なHPでは、時事問題に明るくなるための方法や準備が載っていますが、私は一切やりませんでした。
理由は、
- 時間がない、
- 5問あれば必ず自分の得意分野(教育や家族問題)はあるはず、それに賭ける、
- どうせやっても、練習したフレーズが本番で口から出てこない(自分の習性)
です。
結果は、このやり方で正解でした。
不得意な科学や金融問題に時間を割いて、その度に出来ない自分に腹を立てるよりも、私には合っていた方法だと確信しています。
面接当日は、人生で一番上がってしまい、部屋に入るなり試験官お二人(ネイティブと日本人、共に男性)に懸命にリラックスさせてもらい、それでも無事に椅子に座るまで5分くらい掛かってしまいました。
お二人とも笑いながら、「君をとって食べたりしないから~!」と必死に私をなだめてくれました。お人柄の良い試験官にひたすら感謝です。
最初に、どこから来たか、など自己紹介をして、落ち着いたのを見計らってトピックシートを裏返すよう言われました。
上から順番に見ると、どう考えても選べるのは1問しかありません。
「先生の評価(報酬)は生徒の出来にリンクすべきかどうか?」という教育に関する問題です。
内容はまさに私の専門分野です。問題はどこまで英語で持論を展開できるか、です。
「リンクすべきでない。
理由1は生徒の出来(成果)が出るには有る程度時間が必要であるし、本人のやる気が一番だから、必ずしも教師の努力だけに正比例しない。
理由2は、他人からの評価や報酬だけが教師のモチベーションアップの手法ではない。教育では、人を教えることで自分も育つし、何よりも生徒たちの学びに目覚める姿が最高の報酬である、自分への評価として間違いなく却ってくるから。
結論として、リンクすべきでない、リンクすべきは報酬や評価でなく、生徒と教師の信頼関係である」
(書くと偉そうなことを言っているように読めますが、実際にはもっと稚拙な言い方でした。結論がやや逸脱してしまったのは気づきましたが、そこはポーカーフェイスしました。)
スピーチは、本番で初めて2分きっかりで終るという「超ラッキー」でしたが、同じような表現を繰り返してしまったし、スピーチ終了後に試験官から「いまの結論がよくわからなかったからもう一度言って」と言われ、言い換えたりしたものの、納得の行かない様子が手に取るようにわかりました。でもここで怯んではいられません。
質疑で取り返すしかありません。
全ての質問に、ジェスチャーも交え、とにかく必死で応答しました。
必ず反論めいた質問が一度は有る、と某HPでも読んでいたので、それが来た時は「ヤッター!」と内心思いました。
笑顔一杯に「そうですね、そういう考え方もありますね」と一度しっかり受け止めてから、持論を徹底的に展開しました。
質疑は基本4分とありましたが、間違いなく、私の場合は10分以上だったと思います。
無事に終えて退室後に携帯電話を入れる、首から提げる袋を回収箱に入れるのですが、午後のトップバッターだったはずなのに、回収箱にはすでに20以上も入っています。他の部屋の人たちはとっくに2番手まで終っている・・・!
質疑での手ごたえは感じていましたが、それ以外の点では全く納得行かない内容だったので、秋の再受験も覚悟していました。
結果、運よく合格できました。ぎりぎりの68/100でしたが、やはり質疑は8割超えていました。
茅ヶ崎式英語の先生からのアドバイスが「あなたの場合、スピーチ2分で言いたいことは決して言い尽くせないから、その分を質疑に掛けなさい」だったことも、落ち着いて出来た要因だと思います。
英検1級に関する様々なHPでは、高校生で満点を取るような達人の方々の例に驚嘆したりもしましたが、多くは大人になってから仕事しながら受験する方々だと思います。
2次試験会場でも、これで3度目、4度目、という多くのビジネスマンにもお会いしました。
忙しい日々の中で英語を学び続けるだけでも敬意に値すると思います。その上で、出来ることも時間も限られているのだから、出来ることと出来ないことをしっかり見極めて、出来るところを伸ばすことが私の場合は一番の勝因になりました。
以上、英検1級取得を目指して頑張る皆さんのお役に立てば幸いです。
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